折れた耳に、くりくりした大きな瞳が印象的なスコティッシュフォールド。温和で愛嬌があり、魅力に溢れています。しかし一方で、病気が心配される品種でもあります。スコティッシュフォールドの寿命はどのくらいか、長生きの秘訣はあるのかを解説します。
スコティッシュフォールドのオスメスそれぞれの平均寿命ってどれくらい?
スコティッシュフォールドの平均寿命は約10~13年との調査報告が出ています。猫の平均寿命が14~15年とされているため、スコティッシュフォールドは比較的短命な傾向にあるとも言えます。
スコティッシュフォールドがかかりやすい病気の多くは遺伝性の病気が多いため予防が困難であり、更に一度発症すると完治が難しい病気が多いことが理由として考えられます。
更に、スコティッシュフォールドがかかりやすい病気の1つである「肥大型心筋症(ひだいがたしんきんしょう)」は、命に関わる病気であり中高齢のオス猫に比較的多く見られます。
そのため、きちんとしたデータはありませんが、スコティッシュフォールドもオスと比べメスの方が長生きの傾向にあると言えるでしょう。
しかし、これらはあくまで一般的な話であり、病気にならない子や20年近く生きる子がいることも事実です。
飼い主さんが病気や寿命について悲観し過ぎてしまうと、その気持ちはスコティッシュフォールドにも伝わってしまい、お互いにストレスを抱えかねません。
あまり深刻に考え過ぎず、健康に気をつけながら今飼っているスコティッシュフォールドとの生活を楽しみましょう。
これから家に迎えることを考えている場合には、病気のリスクや管理をする上での注意点などを踏まえて飼育を検討しましょう。
スコティッシュフォールドの死因って何が多いの?
スコティッシュフォールドにはかかりやすい病気がいくつかありますが、その中には命に関わる病気もあります。
肥大型心筋症は、詳しくは後述しますがスコティッシュフォールドに多く見られ、予防が難しく完治も困難な病気です。飼い主さんには健康そうに見えても突然死する可能性があります。
また、猫種には関係ありませんが高齢の猫の多くが腎不全を患います。
15歳以上の猫の30%が患っているとされており、室内飼いの猫の死因第1位とも言われています。そのため、スコティッシュフォールドの死因の上位にもあげられると言えるでしょう。
スコティッシュフォールドがかかりやすい病気とその予防方法とは?
スコティッシュフォールドにはかかりやすい病気があります。病気を知っておくことで予防出来る病気は対策に努め、病気の兆候が見られたらすぐに動物病院を受診するようにしましょう。
骨軟骨異形成症
スコティッシュフォールドがかかる代表的な病気が「骨軟骨異形成症(こつなんこついけいせいしょう)」です。
スコティッシュフォールド以外にも、マンチカン・アメリカンカール・ペルシャ・ヒマラヤンなどの、鼻や足が短く足の短い品種によく見られる病気です。
骨軟骨異形成症は遺伝的な病気であり、骨が正常に成長出来ず本来であればクッションのような役割を果たして関節を保護している軟骨が他の骨と同じように硬くなってしまいます。
前足や後足の関節が硬くなり、こぶのように腫れる「骨瘤(こつりゅう)」のが出来ることもあります。特に後足のかかとの部分の関節は腫れやすいようです。
遺伝による病気のため、確実な予防法はありません。なるべく激しい運動は控え、スコティッシュフォールドが過ごす環境内での段差を少なくするなど、足にかかる負担を極力減らしましょう。
また、日常的にスコティッシュフォールドをよく触り、関節が腫れていないか・関節が曲がりにくくなっていないか確認しましょう。歩き方に変化がないか、痛みを訴える様子がないかなどよく観察する必要があります。
骨軟骨異形成症の疑いのある症状が見られたら、早めに動物病院を受診することが大切です。
変化した骨を治したり、変化を遅らせるような治療はないので、消炎鎮痛剤などを使用し関節の炎症の緩和などを目的とした対症療法が行われます。
肥大型心筋症
肥大型心筋症では、心臓の筋肉が著しく肥大し、動脈に血液を送る心臓の内腔(左心室)が狭くなる病気です。血液がうまく循環されず、心臓が大きくなります。
心筋を構成する遺伝子の異常が報告されており、スコティッシュフォールドは肥大型心筋症が多いとされています。
中高齢のオス猫に多く見られる傾向がありますが、一歳未満の仔猫でも発生した例があります。
アメリカン・ショートヘアやメインクーン・ラグドール・ペルシャ・ノルウェージャンフォレストキャットなどの品種で多く発生し、遺伝によるものとも考えられています。
聴診による心臓の雑音の聴き取りを行い、レントゲン検査で心臓の大きさの変化と肺水腫の有無を確認します。超音波検査は最も有効で、心筋の肥大の様子や血流の異常を確認します。
また、心電図検査により不整脈の診断を行ったり、血圧の測定も行います。拡張型心筋症に伴い腎臓や肝臓の障害を起こす可能性があるため血液検査も行います。
初期の拡張型心筋症ではほとんど症状は見られませんが、心臓の機能が衰えるとお腹に水が溜まる腹水や四足がむくむなどの症状が見られます。
重症化すると心臓から動脈へ血液が送り出しにくくなるために肺に水が溜まる肺水腫を起こすこともあり、この場合浅く速い呼吸をしたり咳などの症状を示します。
また、呼吸困難になると口を開けたまま呼吸をしたり(開口呼吸)、普段のお座りをした姿勢よりも前足を左右に広げて胸を広げるように呼吸をする様子が見られます。
横になると息苦しいため、眠くてもお座りの姿勢で首を伸ばしていることもあります。
心臓の手術は困難なため、血管拡張剤や利尿剤を投与し症状を軽減する治療を行い、状態によっては酸素吸入の処置を行います。
多発性嚢胞腎
多発性腎嚢胞(たはつせいじんのうほう)は、嚢胞(嚢胞液と呼ばれている液体が入った袋)が両側の腎臓にでき、次第に大きくなり腎不全を引き起こす危険性のある病気です。
遺伝性の病気と考えられており、ペルシャやヒマラヤン・アメリカン・ショートヘアなどの長毛種に多く見られます。
腹部が腫れるために胃が圧迫され食欲が低下する場合がありますが、通常痛みは伴いません。
症状が進行すると体重の減少や食欲低下、水をたくさん飲み排尿量が増えるといった腎不全の症状が現れます。超音波検査により診断されます。
遺伝性の病気であるため予防は困難で、多発性嚢胞腎の遺伝子をもった猫を繁殖させないことが一番の予防法と言えます。
この遺伝子を持った猫と健常な猫とを掛け合わせて産まれた猫には、50%以上の確率で多発性嚢胞腎を起こすとの報告もあります。
外耳炎
耳の入り口から鼓膜までの穴を外耳道と言い、そこに細菌や真菌が異常に繁殖し炎症を起こすことによって外耳炎が起こります。
耳道に植物の種やホコリなどの異物が入り込んだり、耳に寄生し激しい痒みを起こすミミヒゼンダニなどの寄生虫が原因で発生することもあります。
スコティッシュフォールドには立ち耳と折れ耳がいますが、外耳炎は折れ耳で多く発生します。
外耳炎になると耳が赤くなる・耳垢が多く出る・後足でしきりに耳を引っ掻く・耳から異臭がするなどの様子の変化が見られます。
外耳炎が悪化すると炎症が耳の奥へと広がり、中耳炎や内耳炎を引き起こします。さらに神経症状を起こす場合もあり、顔面神経の麻痺や眼球が痙攣したように動く「眼振」、首を傾けるといった様子が見られることがあります。
ここまで重症化してしまうと、外耳炎が治ったとしても後遺症として神経症状が残ってしまう場合もあります。
また、継続的に耳を掻くことで耳道が肥厚し、耳の穴が塞がってしまい手術が必要になるケースもあります。
耳の病気は内臓などの病気と比べ軽視されがちですが、治りにくく慢性化しやすいため初期の段階で治療し悪化させないことが大切になります。
スコティッシュフォールドの耳折れ・立ち耳と寿命の関係は?
スコティッシュフォールドの特徴的な折れ耳は、突然変異により耳の軟骨が硬くなったものです。
一般的には生まれた時は立ち耳で、生後2~3週間で折れ曲がります。折れ具合には個体差があり、折れずに立ち耳のままの子もいます。
折れ耳同士の猫やスコティッシュフォールド同士を掛け合わせて生まれた猫には、遺伝的な病気である骨軟骨異形成症が発生する確率が高くなることが知られています。
そのため、繁殖する場合には骨軟骨異形成症のスコティッシュフォールドが生まれることを防ぐ目的で、通常アメリカン・ショートヘアやエキゾチック・ショートヘア、ブリティッシュ・ショートヘアなどと交配を行います。
その結果、折れ耳と立ち耳両方の猫が生まれることになります。
また、スコティッシュフォールドは一般的に折れ耳よりも立ち耳の方が骨などの病気にかかりにくいとされています。
立ち耳のスコティッシュフォールドは前述した理由から折れ耳以外の品種の猫との交配により生まれたケースが多く、遺伝的な病気を受け継いでいないことが多いためです。
肥大型心筋症や多発性嚢胞腎も遺伝性の病気であるため、立ち耳の猫の方が病気の遺伝子をもつ可能性が低いと言えます。
更に、折れ耳よりも立ち耳の方が通気性が良いため、外耳炎などの耳の病気になりにくいとされています。
折れ耳のスコティッシュフォールドが必ず病気を発症する訳ではありませんが、立ち耳と比較した場合には病気にかかる確率が高く、その結果寿命にも差が出てくる可能性があると言えるでしょう。
スコティッシュフォールドが長生きするための秘訣は?
スコティッシュフォールドに長生きしてもらうには、生活環境を整えて病気になるリスクを減らし、定期的に動物病院を受診することが大切です。
食餌の管理
スコティッシュフォールドは肥満になりやすいとされています。肥満は様々な病気の原因となり、心臓にも負担をかけます。
遺伝的に関節の病気になりやすいので、太ってしまった時は激しい運動などによるダイエットは不向きです。1日に与える食餌の量を決め、与え過ぎを防止することで適正な体重を維持しましょう。
マグネシウムやリン・カルシウムなどのミネラル成分が膀胱などで結晶化することにより起こるので、これらを制限した食餌(療法食)を与えることが大切です。おかかや煮干しは与えない方が賢明です。
また、室内飼いの猫の死因第1位である腎不全も食餌の管理が大切になります。塩分の多い食餌は控えましょう。
腎臓は身体の老廃物をろ過する機能を担っています。
腎臓の機能が低下すると老廃物が身体に溜まりやすくなるため、排出を促すよう新鮮な水を与えるなどして飲水量を増やしたり、腎臓病用の療法食に切り替えるなどの食餌の管理が大切になります。
腎臓は一度壊れてしまうと元に戻らないため、進行を遅らせることを目的とした治療を行うことになります。
生活環境
外飼いの猫は短命になる傾向があります。外には交通事故にあう危険性や他の猫から伝染病をうつされるリスクがあります。
猫にとって深刻な病気である猫エイズや猫白血病は10頭に1頭以上が感染しているとのデータがあり、ケンカによる怪我や飲み水を共有することなどでこれらの病気が感染します。
室内では快適に過ごせるよう室温を管理し、関節に負担をかけないよう段差をなるべく減らしたり、床が滑りやすければカーペットを敷くなど関節に負担をかけないような生活を心がけましょう。
定期健診
定期的にワクチンを接種し、予防出来る病気は予め予防し病気のリスクを減らしましょう。
室内飼いであっても、網戸越しによその猫から感染症をうつされてしまったり、飼い主さんが外の猫を触った手でスコティッシュフォールドを触ることで病気がうつる可能性があります。
また、人にとっての1年は猫にとって約4年に相当します。
一見健康そうに見えても知らないうちに心臓病などの病気が進行しており、聴診や超音波検査で発見される場合もあるので、体調が悪くなったときに病院を受診するだけでなく定期的に健診を受けましょう。
避妊・去勢手術
避妊や去勢手術のメリットは、望まない繁殖を避けるだけではありません。
発情期に交尾が出来ないと、猫はストレスを抱えます。ストレスは万病の元です。手術を実施することでこのような心配がいらなくます。
メス猫の避妊手術は、子宮や卵巣の病気・乳腺腫瘍の予防になります。
猫の乳腺腫瘍は8~9割が悪性とされており、悪性の場合完治は困難です。1回目の発情期が来る前に手術することで、乳腺腫瘍の発生は高確率で予防出来ます。
オス猫の去勢手術では、発情期に大声で鳴くことを防いだり、マーキング行動を予防がすることができます。精巣腫瘍など生殖器系の病気の予防にもなります。
もちろん、メリットだけでなく麻酔のリスクや肥満になりやすいといったマイナス面もあるので、獣医さんと良く相談して決めましょう。
スコティッシュフォールドが突然死するって本当?原因と対策は?
スコティッシュフォールドに多いとされる肥大型心筋症では、血栓塞栓症(けっせんそくせんしょう)が起こることがあります。
肥大型心筋症になると血液の循環が悪くなり、心臓の中に血栓(血の固まり)が作られることがあります。血栓が心臓から出て動脈の血管に詰まってしまう状態が血栓塞栓症です。
レントゲン検査や心電図検査、超音波検査などで診断されます。
血栓塞栓症を起こすとスコティッシュフォールドは急に大声で鳴き出したり、後足を引きずりながらばたばたと部屋中を走り回ることがあります。
また、下半身全体に血液が循環しなくなり、後足が冷たくなり肉球の赤みがなくなります。
突然死を起こすこともある非常に危険な状態であるため、一刻も早い治療が必要になります。
動物病院では血液の凝固機能を阻止するへパリン療法や、血栓溶解剤の投与を行い、状況により手術で血栓を取り除くこともあります。
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